話せるということ、声が出るということ


私にとって

あの日、あの時の経験がなかったならば、

「迷い」と「決断」という言葉に対し

私が思い浮かべるテーマは、

きっと

『私の恋愛について』

『私の転職について』

『私の結婚について』などだっただろう。。





私の父は数年に渡り癌と闘病している。

手術をしては転移。完治をしては再発。


そんな闘病中の中、

甲状腺癌の手術が行われたある日、

私は父の人生を左右する人生最大の決断をする事になった。



待合室で手術の成功を祈る中、

のんびりと本を読み待つ私達とは対照的に

急に周りがバタバタと騒がしくなった。


「父に何かあったのかな…」

そう不安に思っていると、

手術室から担当医の先生が飛び出し

私たちの方へ向かってくる。



『2分以内に決めてください』



話を聞いていると

どうやら、父の腫瘍は声帯にかぶってしまっていたとのこと。


ガン細胞を全て摘出した場合、

完治はするが、父はもう二度と声を発する事ができない。


声を残したいのであれば、

可能な限りのガン細胞を摘出はするが、

完治はせず、さらに転移する可能性がある。



 隣で号泣し崩れ落ちる母を横目に、

判断は私一人に任された。



許された時間も残り数秒、

私は今までにないほど「迷い」、

人生最大の「決断」をした。


『父の声を奪わないでください』と。




たった2分ではあったが、

あんなに重い2分は二度とないだろう。


自分の人生でなく

父の人生を左右する決断を

22歳の私はしたのだった。